講座 Course

講座

公開日:2024.09.04

【実践講座2024】第2回〜景観を理解する〜

2024年7月、京都景観エリアマネジメント講座 実践講座の第2回が開催されました。実践講座は基礎講座を修了した方を対象に実践的な学びを提供するものです。今回は堀 繁先生と一緒に実際の嵐山を歩き、景観の理解のしかたを現地で学びました。

阪急嵐山駅から、虚空蔵山中腹の「十三まいり」で有名な法輪寺へと向かいます。堀先生からは「木や柵は人を入れたくないというメッセージであり、丁寧な作業は人を招き入れる仕掛けである」との解説がありました。

寺の入口には枯れ川に架かる橋があり、まるで両手を広げて招き入れているかのような入り角です。橋の上とその先の道には伝統的手法の「縦張り」と縁端のある石畳が続き、まさに誘い込まれているような気分になりました。

階段が2か所続き、ようやく山門が見えてきました。ここで、基礎講座で先生から習った「握り拳と腕を使った簡単な角度の測り方」を実践。ひとつ目の階段の上から山門を仰いだ仰角は8度、ふたつ目の階段の下からは仰角が12度。山門から後ろを振り返ると、参道が途中で遮断されていました。山門付近に駐車場を作ったため、車道が参道にかかったことが原因となったようです。

山門を抜け、木々に囲まれた石段参道を登り切ると、正面に本堂が建っていました。仰角を40度にすることで後ろの山との一体感が景観的に演出されています。多宝塔も境内からではなく、大堰川から見た時に壮大に見えるよう大きめに作られているそう。どの視点からも立派な山奥の寺に見えるよう、工夫が凝らされているそうです。

法輪寺から渡月橋まで降りていく道中では、「嵐山の魅力を構成する要素は、川と橋と山が見えることだ」との解説がありました。堀先生は「渡月橋から見える位置に設けられた大堰川の跳水からは水音が聞こえ、白波が見える。山の中腹の木が見込み角20°で一本一本くっきり見える。春には桜、秋には紅葉を愛でることができる。しかし、現在のベンチは川に並行に設置されているため、座ってこの絶景を存分に観ることができないのが残念だ」とおっしゃっていました。

その後はさらに嵐電嵐山駅まで歩きましたが、ここにも「人を招き入れる仕掛け」がありました。駅の構内には飲食店が軒を連ね、柱を背に配置されたベンチで買ったものを食べることができます。夜には灯りでさらに誘われる雰囲気が増します。一方、メインストリートである長辻通はベンチがなく、歩行者専用ではありません。通りは無電柱化されていますが、柱上トランスの形が大きく歩道を阻んでいます。

長辻通りから小径に入ると、海外からの観光客も惹きつける非日常的な竹林の空間がありました。竹林は日本全国にありますが、道端が石畳になっているような丁寧な作業は京都ならではということでした。最後に野々宮神社まで歩きましたが、ここの階段も入り角になっていました。

その後、グループワークの各チームに分かれ、嵐山チームは嵐山まちづくり協議会のメンバーの方の店舗を訪問し、醍醐チームと深草チームは今後の活動について昼食を取りながら議論をしました。

猛暑の中、しかも観光客で溢れかえるエリアでの実習でしたが、本日のような探究的な見方や地域課題の解決力を養うフィールドワークが、今後のグループワークに生かされることと思います。

文:上杉 里延子(京都景観エリアマネージャー)


 

京都景観エリアマネジメント講座の実践講座は、地域の景観まちづくりの現場の体験やグループワーク、個人レポートの作成などを通じて「自分がどのように景観まちづくりに貢献していけるか?」を考えるプログラムです。

基礎講座・実践講座の両方を修了すると「京都景観エリアマネージャー(エリマネ)」として認定。京都景観フォーラムの景観まちづくり活動に参加することができます。

 

2024年度の受講生募集中!ぜひ以下からご確認ください。