地域の活動事例

コロナ禍での建築協定更新

2021.10.31

久我御旅町南部住宅地区の事例

 

1 地域の特色 ~京都市の南部に位置する閑静な住宅街~ 

当該地区は、昭和40年代に開発され、一区画の敷地面積が約50坪程の住宅が建ち並ぶ、閑静な住宅地です。

開発当時は、30代~40代のファミリー世帯を中心に構成されていました。現在(2021年)は住民の高齢化や空き家などの課題が生じていますが、この地域の環境の良さに惹かれ、もとは近隣にお住まいだった若い世帯が数軒引っ越ししてこられています。地区全体で60戸弱、面積は約1haと程よい範囲で、開発当初からの緩やかな近所づきあいが現在でも保たれている地域です。

 

2 更新1年前の役員交代 ~コロナまん延と重なってしまう~

久我御旅町南部住宅地区では、3人体制で運営委員会を構成しておられ、2年交代の投票制となっています。協定の期限が2020年11月でしたが、委員の交代が2019年10月で、委員交代後に実質的な更新に向けての活動を始められました。

2回のアンケートにより地域の意向調査と16回に及ぶ役員会を行い、その上で2020年2月に総会を予定されていましたが、ちょうど新型コロナウィルスのまん延が重なり、活動が一時期ストップしてしまったため、期限には間に合わない状況となりました。(その結果、一旦失効となってしまったのですが、京都市建築指導課の協力もあり、4か月遅れの2021年3月、無事、協定を締結されています。)

 

3 総会が転機に! ~話して・聞いて・考えて、締結当初の思いに気付く~

更新にあたり、争点となったのは、敷地の区画分割・敷地地盤面の高さ制限の緩和、建築物の高さ制限の緩和です。

これまでから、「区画が大きすぎると売れない。」「若い人が買えない。」(一部の事業者が「分割しないと売れないよ~」と言ってくるらしい・・・)「桂川の氾濫を考えると地盤面を高くすることや、建物の高さの緩和が必要なのでは」と言った声もあり、アンケートでも同様の意見が寄せられていたそうです。

2020年6月、地域の意向を反映した協定案を作成し、総会ではかることとなりました。地域の60%の世帯が出席した総会では改めて、敷地分割した場合の地域の変化を考えながら意見交換が行われ、防災については、近年河川整備がなされたことによるリスクの低減について話し合われました。

そうすると「協定内容を緩和する必要があるのか。もっと厳しくてもいいのでは?」という、これまでとは逆の方向性に全体の意見が変わっていきました。多くの方々が「今の久我御旅町南部はいい感じ!」と気づかれたようです。

 

結果として現状維持で良いという意見が多く、「建築協定で保たれている、心地よい住環境をこれからも大切にしていきたい」という思いが一致するとともに、昭和60年に協定を最初に締結したときの「お隣さんどうし、顔をも見合わせて挨拶できる地域にしよう」という地域の思いに気付くことができ、改めて共有されることとなりました。

 

4 運営委員さんの地道な取組 ~一戸ごと、丁寧に説明されました~

総会開催後、3人の運営委員の方が中心となり、改めて地域のふさわしいルールの検討や更新案の作成、各戸への意向調査が行われました。

全戸に対し、3人が手分けしてface to faceで丁寧に説明を行い、協定への協力を求められ、その結果、新たに4軒が新規加入されました。

逆に協定を抜けられたりした方もおられたようですが、その理由についてもしっかりと聞かれています。(理由として高齢等によるもので、協定に対する積極的な反対者はおられなかったようです。)

 

5 京都市へ認可申請 ~有効期間は5年更新~ 

久我御旅町南部地区では、今回の取組において、コロナまん延により活動を一時中断せざるを得ず、更新の期限が迫ってしまったため、規制内容についての議論が十分ではなかったとの思いから、今回の協定の有効期間を5年とし、2021年1月、京都市へ認可の申請をされました。

「地域の何を大切にしたいか」をしっかりと話し合い、地域住民のニーズを受け入れながら規制の内容を決めることが最も大切なことであるということを踏まえた結論として、5年更新という判断となりました。

 


 

規模による運営しやすさってのもありますね

 

更新にはそれに適した体制づくりも大事ですね

 

丁寧な説明、皆とのコミュニケーションが合意の基礎になる

 

ビジョンやルールの意義を共有すれば、結構みんな納得

 


参考 協定更新までの経過(←クリックでPDFファイルが開きます)

 

参考 協定の概要

© 2024 kenchikukyoutei org