地域の活動事例

「建築協定チェックシート」を新たに作成し、地域と建築主との確認事項を明確化

2021.10.31

伏見区向島リバーサイド地区の事例

 

1 地域の特色 ~ほぼ同時期に新築。それから35年が経過~

昭和の終わり頃、市の住宅供給公社が約2年をかけて開発した一戸建てが100軒弱集まる地域で、小学校が隣接していることから、子育てにはとても適した環境です。

当時は30代のファミリー世帯が中心で、子どもさん達もたくさんおられたため、子どもを介した活発なコミュニティが出来ていました。

時が経ち、最近は高齢でおひとり暮らしの方も増えてきていますが、自治会の取組として年に数回、公園のお掃除をされています。それぞれ無理のない範囲で参加されており、顔を合わせて話が出来るいい機会となっています。

 

2 不動産屋さんから新築計画の相談 ~建築協定を忘れていました…~

これまで地域内での物件の売買もありましたが、中古物件として取り扱われたようで、建築協定で直面するような課題はありませんでした。

しかし、35年が経ち、とうとう中古物件ではなく、建て替えて売り出される時期が来たようです。

ある日、運営委員長(兼自治会長)の鈴木さんに不動産屋さんから「この地域に建築協定ありますよね」と連絡があったそうです。実はこの時、鈴木さんご本人も正直なところ建築協定のことを忘れておられ、どう対応したらいいのか困られたそうです。不動産屋さんは「最近、ワンボックスカー等、車が大きくなっており、駐車スペースを広く取りたいので南側敷地境界線から80cmの規定を50cm以下にしてほしい」との申し出をされました。

単に協定の規制に外れているからダメ、というのではなく、その根拠を示して相手に納得してもらう必要があります。改めて町内で建築協定の持つその意味合いを考えられることになり、そこで風通しや採光、他のお宅とのバランスなど、心地のいい住環境を維持するための協定であることに気付くことになったそうです。

委員会から再考を不動産屋さんにお願いしたところ、最終的には受け入れていただき、その結果、83㎝離すことになりました。

 

3 建築協定チェックシートの作成 ~互いが自覚を持てるように~

今回の新築計画を機に、地域と建築主が協議をするための資料として、「京都市伏見区向島リバーサイド津田地区建築協定承認申請書」(建築協定チェックシート)(※クリックでPDFファイルを表示)を新たに整えられました。これは、相手に建築協定への意識を高めていただくことを目的とし、また、地域の本気度を示す意味合いも含んでいます。建築主は図面の写しと共に、建築協定の内容に関して「適合・不適合」に自らチェックした上で地域に提出していただくようになっています。

提出されたチェックシートは委員で内容を確認し、チェックを入れ、確認したことを明確にします。そして、建築主への回答については、両者のやり取りに重みを実感できるよう、「建築物に関する審査結果通知書」(※クリックでPDFファイルを表示)を2部作成して、それぞれ押印して保管するようになっています。

 

4 町内ニュースで周知 ~体裁は気にせず、簡単に~

自治会では、今回の不動産屋さんとのいきさつを「町内ニュース」を作り、共有されたそうです。他にはゴミ取集置き場のことなど、地域の伝えたい情報と一緒にお知らせされました。大きな文字で、「こんなことが町内でありました。」という簡単な内容だそうですが、情報を共有することをとても大事に考えておられています。

地域の方々は「明るいのはいいね」と、協定により風通しや日当たりが確保出来ていることを改めて感じられているようで、建築協定の重要性が広まっているようです。

 

5 これから増える新築 ~建築協定の力を発揮していきたい~

建て替えが増えてくると予想される今後、鈴木さんは「建築協定の力が発揮されるのはこれから。運営委員会が事例の積み重ねていくことが大事」と話されています。

 向島リバーサイド地区 鈴木さん

新築となると、「建物敷地や駐車場を出来るだけ広くとりたい」と通常は思われるでしょう。しかし、地域特有の住環境を大切にしていくには、建築協定が大きな役割を担っているのではないでしょうか。

以前、テレビがアナログ放送だった時、この地域は共同アンテナで、屋根にはアンテナが建っておらず、すっきりとした景観だったそうです。しかし、デジタル移行時に共同アンテナが撤去され、個別対応となってしまい、各屋根にアンテナが取り付けられました。「このとき建築協定をもっと前面に出して対応すればよかったなぁ」と鈴木さんは振り返っておられています。

 

6 役員はいろいろと大変 ~でも、放っておくわけにもいきません~

向島リバーサイド地区の運営委員は、自治会の役員の兼任となっており、毎年委員が変わることになっているため、取組を継承していくことが課題です。住民の高齢化や自治会から抜ける方もおられるため役員選出が大変で、鈴木さん自身も「役員はいろいろ大変なので、出来れば避けたい」というのが本音だそうです。しかし、「なったからには、出来ることをしよう。」という気持ちで取り組んでおられます。

余談ですが、今回、不動産屋さんから連絡があり、どうしたらいいのかわからなかった鈴木さんから、建築協定連絡協議会に相談のお電話をいただきました。建築協定連絡協議会は、日々の運営やまちづくり活動で、ちょっとしたことがわからない時など、まちづくりに取り組まれる方々の気軽な相談先でありたいと考えています。

 


 

チェックシートや審査結果通知書を整えられました。

 

なぜ、協定があるのかを考え、伝えられました。

 

町内ニュースでわかりやすく共有されました。

 


 

参考 協定の概要

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