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公開日:2019.11.12

【藤城】地域で始める「乗り合いワゴンによる買い物支援」の取り組み

京都市伏見区に位置する、藤城学区。学区内のほとんどが住宅地ですが、坂道や狭い道が多く、人々の足となる路線バスが運行しにくい、という難点があります。
このあたりには商業施設が少ないため、住民、特に高齢者の方の交通手段がないことが大きな問題になっていました。

これを解決しようと、まちづくりビジョン推進委員会の「利便性部会」と藤城学区自治連合会が協力した、「乗り合いワゴンによる買い物支援」の取り組みが今年から始められました。
これは、地域の方をワゴン車でショッピングモールまで送り迎えすることで、買い物の負担を減らそう、という試みです。

定員は7名で、現在は日曜日と木曜日の週2回運行。
締め切り日までに地域の担当者に連絡して予約し、近所まで迎えにきてもらうシステムになっています。

地域の京都老人ホームから貸し出し協力いただいた車を使用し、自治連合会の会長である高橋さんが運転手をつとめられています。
利用料は無料で、車内に置かれている募金箱で協力金を集めています。

 

今回の取材では実際に買い物に同行し、利用されている皆さんの声を聞いてみました!

「このあたりは坂が多くて歩くのが大変だし、日用品を買えるお店が近くにないのでとても助かっています。
かさばるもの、重いものを車で一度に運べるのが、とても嬉しいですね。」

「行き帰りのバスのなかでのおしゃべりも楽しくて。
ご近所で顔を見かけたことがある方たちといっしょに行けて、横のつながりができるのもいいことですね。」

皆さん、たくさんお買い物をされて楽しそう!
出発までの待ち時間のあいだも、会話に花が咲いていました。

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本日も運転手は、藤城学区自治連合会会長の高橋さんです。
みなさんがお買い物をされているあいだに、この取り組みについて、お話を聞くことができました。

藤城学区自治連合会 会長
高橋 猛さん

乗り合いワゴンの運行で取り組んでいるのは「買い物支援」ですが、そこにあるのは、便利さだけではありません。
家に閉じこもりがちなお年寄りが、週に1回でも外に出て楽しい買い物の時間を過ごし、地域に友だちの輪を作る。それが大切なのではないかと思っています。

この乗り合いワゴンを通じて顔見知りが増えたら、地域の行事にも「ちょっと参加してみようかな?」という気持ちになってもらえるかもしれませんよね。
体力がなかったり、家族に小さな子どもがいなかったり、という理由で参加していなかったイベントにも、気軽に足を運んでもらえるようになったらいいな、と考えています。

実際に乗り合いワゴンを運行してみて数カ月がたち、だんだんと課題も見えてくるようになりました。
現在は口コミで新しい利用者の方が増えていて、週2回のペースでは追いつかなくなってきています。便数を増やすとしても、運転手さんを確保するとともに、運用に必要な資金をどうやってまかなっていくか、考えていかなくてはなりません。
地域で協力してくれる方が増え、参加者同士の交流を深められる場に育てば、と願っています。

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藤城学区では、数年前から京都景観フォーラムが地域サポートを行っています。
今回の乗り合いワゴンの取り組みも、森川専務理事、篁理事、エリマネの服部さんが実施までのお手伝いをしてきました。

 

京都景観フォーラム 
森川 宏剛 専務理事からのコメント

藤城地区には、2017年に「藤城まちづくりビジョン」の作成をお手伝いしたことをきっかけに関わらせていただいています。
藤城まちづくりビジョンでも、高齢者の方々の足となる交通手段が少ないことは、課題として挙げられていました。

(藤城まちづくりビジョン冊子)

これまで、市バスのルートを広げる要望を出したり、コミュニティバスを事業化して運営できないか試みたりしましたが、ともに実現には至りませんでした。
そこで、地域コミュニティの力”を使って課題を解決することを考えました。事業ではなく、あくまで“ご近所さん同士の助け合い”というスタンスで、小さな規模で続けてみてはどうかと考えたのです

乗り合いワゴンの取り組みは一見、景観づくりとは無関係そうに見えますが、“コミュニティの力で課題を解決する”、という点で大きく共通しています。
地域の景観づくりも、このような課題解決も、インフラ整備のようなハード面からのアプローチではなく、“人とのつながり”というソフトの面から取り組んでいくことが欠かせません

乗り合わせた方々が顔見知りになることで地域のコミュニティ形成が進み、今後の藤城まちづくりビジョンの実現にもつながるのではないかと考えています。

(地域でのイベントの様子)

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始まったばかりの藤城のコミュニティバスの取り組み。
思った以上のニーズや感謝の声があって嬉しい反面、運行を続けていくための新たな課題も出てきたようです。
自治会長の高橋さんは年内にこれまでの振り返りを行い、より地域の方が使いやすい仕組みにしていけるよう改善していきたい、とおっしゃっていました。

 

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▼京都景観フォーラムの地域サポート活動の紹介はこちら
https://kyotokeikan.org/activity/support


文・写真:土谷 真咲(京都景観フォーラム 広報チーム)